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拓庵月記
拓庵月記:48
蘇民将来之子孫也(そみんしょうらいのしそんなり)
2007年07月02日

八坂神社の御祭神、スサノヲノミコト(牛頭天王)が南海に旅をされた時、一夜の宿を請うたところ、粗末な庵の主であった蘇民将来は貧しいながらも厚くもてなしました。するとスサノヲノミコトは、疫病流行の際「蘇民将来之子孫也」と記した護符を持つ者は、疫病より免れしめると約束されました。(伝:備後国風土記)

疫病退散を祈願して7/1〜31まで催される祇園祭では、その故事にちなみ「蘇民将来之子孫也」の護符をつけた「ちまき」が長刀鉾から撒かれます。この笹の葉に巻かれてワラの柄がついた護符ちまきを、京都の町衆は門口につるして厄除けとしてきたのです。
水無月
2007年06月01日
京都では六月三十日に和菓子の水無月を食べる習慣があります。
これは一年の折り返しの日に半年間の穢れを祓い、無病息災を祈って茅の輪をくぐる神事「夏越祓(なごしのはらえ)」と関連していまして、三角形に切られたウイロウは暑気払いの氷に見立てられ、上に乗った小豆には邪気祓いの意味が込められています。

その昔宮中では、この時期に氷室(山の中に掘った自然の冷蔵庫)の氷を食べると夏痩せしないとされていた年中行事が執り行われていましたので、この習しを取り入れた京の町衆がその代用として水無月を食すようになったとの説があるとも記憶しております。
粋人と酔人
2007年04月09日
滋賀と京都をつなぐ琵琶湖疎水。その一部である山科疎水は1892年に完成しました。水辺には桜が植えられていて、先日この満開の桜を見に行ってきました。

ここは比較的人出も少なくて、ゆっくりと穏やかに散策できます。途中、一心に絵を描く人たちや、座り込んでぼんやりと物思いに耽っている粋人にも出会いまして、私も心しずかに花びらの舞うさまを眺めておりました。(花曇りの背景に、桜と菜の花の対比が何とも美しい!)
一部、花見と称して騒ぎたてる集団もいらっしゃいましたが(笑)。楽しそうなのは結構ですが、あまりに酔っ払って喧騒の権化となるのはいかがなものかと・・。見ザル聞かザルでその場を通り過ぎました。

春の訪れと桜の儚い美しさの中で、世事や己の来し方行く末をしみじみ思う。そんな花見がよろしゅうおす。
哲学の道
2007年03月14日
ここしばらくの寒の戻りで、春の息吹もどこかへ行ってしまいましたね。京都の桜開花予想は3/26だそうです。

さて、銀閣寺から若王寺(にゃくおうじ)神社まで、琵琶湖疎水分流沿いに約1.5kmの小径が続いています。春は500本の桜、初夏にはゲンジボタル、秋の紅葉。景観の美しいこの辺りは、かつて哲学者の西田幾多郎(純粋経験・・うーむ、何のこっちゃ!)が思索に耽ったことから「哲学の道」と呼ばれて、日本の道百選にも選ばれています。

観光シーズンや週末には大勢の人で混雑しますが、オフシーズンの平日などは長閑な風景を堪能できます。地元の人が犬を散歩させていたり、子供が遊んでいたり。自己との対話でゆったりとした時間を過ごしてみませんか?

「人は人 吾は吾なり とにかくに
         吾が行く道を 吾は行くなり」 西田幾多郎
東風(こち)吹かば
2007年02月12日
奈良時代から平安時代にかけ、花見と言えば桜よりも梅が好まれて、和歌の題材にも多く取り上げられていました。
梅の花をこよなく愛したという菅原道真公が祀られている北野天満宮(京都市上京区馬喰町)。その境内には50種類約2000本の梅が植えられています。
正月明けの早咲きの梅に始まり、白梅・紅梅・八重などの順に咲き誇っていき、毎年二月初旬には梅苑が公開されて、辺りに芳しい香りが漂います。

 東風(こち)吹かば匂ひおこせよ梅の花
                主なしとて春を忘るな
六孫王神社
2007年02月06日
今年の節分は普段からよく参詣しております六孫王神社に出かけてきました。(京都市南区壬生通り八条角)
六孫王という名は、清和天皇の六男を父として生まれ、経基と名づけられて、後の源氏の祖となった祭神が、皇室では六男の六と天皇の孫ということで六孫王と呼ばれていたことに由来します。

一年で最も寒さが厳しい節分ですから、雪がちらつく情緒のある風景を期待しての参詣だったのですが、ホンマに暖冬ですね。まるで境内の桜も季節を勘違いして、開花準備を始めるほどの穏やかな気候でした。

いつものことですが、本殿の前に立つと、この穢れきった心身が清らかに洗われていくように思います。←そこまで自虐的にならずとも(笑)
香原料のお話
2007年01月22日
香木は推古天皇3年(595年)4月に淡路島に漂着したのが最古の記録とされています。奈良時代には香原料を「えび香」と呼び、平安時代には衣服への移り香を楽しんでいたようです。

香原料のほとんどはインド・スリランカ〜中国・ベトナム〜インドネシアあたりで採れます。代表的な香原料を挙げますと、線香や扇子にも使われる香木で、甘く酸味のある香りが特徴の「白檀」。スパイスのクローブとしても知られ、スパイシーで甘みのあるさわやかな香りの「丁子」。京都ではお菓子の八つ橋で知られ、甘みと苦味の混じった別名シナモンこと「桂皮」のほか、中華料理のスパイス・八角は香原料では「大茴香(だいういきょう)」と呼んでいます。そしてボルネオ島やスマトラ島に分布する龍脳樹から採れる白い鱗状の結晶である「龍脳(りゅうのう)」は清涼感のある香りで、匂い袋には欠かせません。

更に「山奈(さんな)」「甘松(かんじょ)」「カッ香」などを調合して匂い香を作っています。同じものを仕入れましても、その都度微妙に香りが違うのも一興です。画像は「龍脳(りゅうのう)」で、天然の原料とは思えない不思議な色をしています。
根引きの松
2007年01月01日
新年あけましておめでとうございます。
皆々様のご健勝とご多幸をお祈り申し上げます。

旧年中は格別のお引き立てに預かり、厚く御礼申し上げます。本年も相変わりませずご愛顧のほど切にお願い申し上げます。

門松のお話をひとつ。古くから京都では「根引きの松」と呼ばれる大変質素なものを使います。根の付いた細い若松を白い半紙に巻き、紅白(本来は金赤とも)の水引を結んで玄関の柱にひとつ飾ります。それを目印に年神さまが降りて来られるのだそうです。
その後、江戸時代になって儒教の影響から松竹梅を用いたり、またおそらく赤色=「魔除け・おめでたい」の意から南天や葉牡丹を組み合わせて飾るようになりました。
しかし祇園花街の老舗お茶屋さんや料亭、いかにも旧家らしき京町屋などには、むしろ今もなおこの簡素な「根引きの松」を見受けられることがあります。シンプルな中に坪庭の小宇宙にも共通する奥深さがあって、そのほうがより情趣に富んでいますね。
おけら参り
2006年12月19日
今年もあと僅かとなりました。皆様にご愛顧いただきまして、「拓庵」も今年一年を無事に乗り越えることができました。心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

さて、大晦日の京都の神事をひとつご紹介します。古くより除夜の鐘を聞きながら祇園の八坂神社(画像)に参詣する「おけら参り」という風習がございます。境内の灯篭に燃える「御神火」を吉兆縄に移して、火が消えないようにそれをぐるぐる回しながら家まで持って帰り、神棚の灯明をつけたり雑煮を作る火種として一年の無病息災を祈るそうです。

京都に生まれ育った私も、残念ながらこれは未経験なのです。家に「おくどさん」も神棚もありませんし、だいたい火の付いた縄を回しながら人ごみの中を歩いていくのは無理ですし、かと言って車や電車には乗車拒否されますやん(笑)。できればこうした伝統の風習を少しでも継承できるように環境を整えて、京都の文化の一端を担っていきたいとの気持ちは十分に持っているのですが・・。「おけら参り」実践するのは至難の業なり。

それではちょっと早いですが、「皆様よいお年を!」
京都・嵐山花灯路(はなとうろ)
2006年11月28日
桜の季節が訪れる前、まだ冬の寒さが抜けきらない三月に東山〜清水界隈で花灯路と銘打ったライトアップが行われていますが、このイベントが好評のため、初冬の嵐山〜嵯峨でも三年前から花灯路が催されるようになりました。
今年は12/9(土)〜18(月) 午後五時〜八時半

嵐山の渡月橋や嵯峨の竹林が美しくライトアップされるほか、中の島公園は竹行灯、大覚寺大沢池には巨大提灯が灯され、散策の路沿いも大きな花器を用いたいけばなが展示されます。
昼間とは一味違った夜の幻想的な景観と様式美をご覧になりませんか?夜は冷え込みますから、しっかりと防寒してお越し下さいませ。
紅葉
2006年11月07日
立冬を迎えた途端、近畿では木枯らし一号まで吹き、一気に本格的に秋めいてきました。これから紅葉が見ごろとなっていくのでしょう。

ところで何故木々の葉が赤や黄色に色づくのかご存知ですか?調べました(笑)。冬が近づくと植物はうまく越冬するために葉を落としにかかります。(夏場に葉からたっぷりと養分を取り込んだものの、冬季は葉があると生命維持にかえって邪魔なのだそうです)

葉を緑色にするクロロフィルはアミノ酸に分解され、アントシアニンという色素が生成されて赤く色づきます。←カエデなど。またクロロフィルが少なくなると隠れていたカロチノイドという黄色の色素が表に出てくる場合もあります。←イチョウなど。

植物の命の営みが結果的に人の目を楽しませてくれるとは、自然界に感謝ですね!そろそろ京都でも仏閣や各名所で紅葉のライトアップが始まります。
曲水の宴
2006年10月30日
 平安遷都にあたり都の南の守護神として創建された城南宮は、方除(ほうよけ)の大社として知られていますが、ここでは春と秋に二度「曲水の宴」という行事が催されます。          

楽水苑に流れる遣水のほとりで、狩衣を着た公卿や小袿姿の女房が、上流から杯が自分の前に流れてくるまでに歌を詠んで短冊にしたためるという何とも風流な宴です。これは城南宮近くにあった鳥羽離宮で藤原定家や後鳥羽上皇が歌会を催していたことに因んで始められたそうです。

季節や花鳥風月の機微に触れ、文学や管弦に親しみ、感性と深い精神性に富んでいた貴族の暮らしに思いをはせてみるのも一興ですね。
霜降
2006年10月23日
食欲の秋ですから「しもふり」と読んでしまいそうですが(笑)、霜降(そうこう)です。
二十四節季の一つで陽暦10月23日頃。

「秋の気配が一段と深まって朝露を見るようになり、紅葉が盛りとなっていく季節」ということです。関西では、まだ日中などはうっかりしていると汗ばむこともありまして、実際には霜降まであと一ヶ月は待たねばならないように思います。

その頃には紅葉も見ごろとなって、京都も嵐山や八坂〜清水の東山に大勢の観光客が訪れる季節となります。
時代祭
2006年10月02日
 10月22日、京都三大祭りの一つの時代祭が行われます。明治維新から延暦時代へ、新しい時代から古い時代へと繰り広げられる一大時代絵巻で、壮麗な行列が京都御所から平安神宮まで練り歩くのです。

祭りの起源は、平安遷都1100年にあたる明治28年3月に桓武天皇を祭神とする平安神宮が創建された際、その祭りを盛大に行おうと、京都が都であった時代の風俗の変遷を表現する時代行列が提案されたのが始まりですから、歴史的にはさほど古いものではありません。

しかし18列、約2000人、牛馬70余頭で全長約2kmにおよぶ行列での衣装や調度品、祭具は1万2000点にも上り、京都の工匠や染色の識者が考証研究を重ね、帯1本から糸に至るまで各時代の素材を使い現在に蘇らせたものだそうです。

私などは「あ!あの紫式部や清少納言の衣装を細かく切って、におい袋を作ったら、『いとをかし』とちゃうかな?」などと平安装束におい袋化計画を企てながら眺めたりしております(笑)。
なお同日夜には牛若丸で有名な鞍馬の火祭りも執り行われます。
きんらん
2006年09月19日
弊店の(大)におい袋で使用しております生地は「きんらん」と申しまして、糸に金(銀)箔を巻きつけた金(銀)糸に色糸を交えて織り込んで模様を顕した布地です。
もともと中国の宋(明)代に始まったものですが、日本には桃山期に伝わって京都・西陣で織られるようになりました。

古くは正絹を用いて高僧の袈裟や茶道具の意匠、また花嫁や人形の衣装が作られましたが、現在細工用に市販されている「きんらん」はポリエステルなどの化繊が多いようです。
弊店におきましては、におい袋に合う華やかな「きんらん」を日々探しているのですが、布地が厚すぎて扱いにくかったり、柄が大きすぎて模様が上手い具合に正面に来なかったりと、なかなか適切なものを見つけるのが難しいのです。

しかし最近、煌びやかで面白い「きんらん」を少しばかり入手できましたので、近々新商品をアップする予定でおります。どうぞお楽しみに!

追伸
(大)におい袋「しだれ梅」「宝づくし」「青嵐」を発売しました。左上の カテゴリ一覧→きんらん でご覧になって下さい。
地蔵盆
2006年08月21日
 京都では8月23・24日を「地蔵盆」と呼びまして、町内ごとに祀られている地蔵尊にお花や餅を供え、子供たちの無病息災を祈る伝統行事があります。
一説では京都市内に地蔵尊は5000体もあるそうで、大きなお祭りとは違って、各町内という非常に狭い共同体の親睦をはかる役目を担っています。

町屋の一室、神社の一角、マンションの会議室、個人宅のガレージなどを使い、そこにゴザを敷いたりや床机を置いたりして近所の子供たちが賑やかに集うのです。
福引があり、おやつが振舞われ、残り少ない夏休みを謳歌するのですが、私の子供の頃などは、そこに夜間は提灯が灯されて、何だかあの世とこの世の辻に居るような、ちょっぴり怖いような感覚を覚えたりしたものでした。

子供たちの心に深い思い出となって残っていくように、いつまでも絶やすことなく続けてもらいたい夏の名残の行事です。
五山送り火
2006年07月24日
毎年8月16日午後8時から、京都盆地の周囲の山に「大文字」「妙法」「船形」「左大文字」「鳥居形」の送り火が灯されます。
 
 これはお盆に戻ってきた精霊が再び冥府へと帰っていく精霊送りの行事で、その起源は平安時代初期の空海とも室町時代中期の足利義政とも言われますが、実ははっきりとは分かっていないようです。
 しかし年中行事として定着した今では、五山送り火は京都人の心の故郷であるかのような情趣に満ちていて、往く夏を彩る風物詩となっています。
 
 たまに「大」の字が悪戯で「犬」になったりしましたがご愛嬌で・・。それよりも往く夏を惜しむのが「いとをかし」な行事であったのに、地球温暖化のために残暑が9月いっぱい、また10月になっても続くことのほうが興ざめでございます(笑)。


お知らせ
8月16日(水)19:55〜20:50に五山送り火をテレビで実況される
KBS京都放送さんが、大文字保存会より提供された縁起物の『消し炭』を、当店のちりめん巾着袋に入れて、抽選で100名様にプレゼントされることになりました。8/20締め切りです!

詳しくは http://www.kbs-kyoto.co.jp/okuribi/ まで
床(ゆか)と床(とこ)
2006年07月17日
京都の夏の風物詩としまして鴨川の納涼床(ゆか)と貴船の川床(どこ)がございます。前者は二条大橋から五条大橋までの鴨川沿いに数多くの床が組み立てられて、昔ながらの会席料理を出す料亭のほか、最近では中華やフレンチのお店、お洒落なバーなども見受けられるようになりました。鴨川の流れや東山連峰を眺めながらの宴席は中々の風情があるのですが、避暑という点ではやはり後者の貴船でしょう。市街地よりも10℃は気温が低く、貴船川の流れの上に直接組まれた床から、手足を清冽な水に浸すこともできるのです。結構なお値段の事や肝心の料理の中身はちょっと置いときまして(笑)、それでもマイナスイオンいっぱいの自然の中に身をおく贅沢は味わえますよ。
祇園祭
2006年07月01日
京都に本格的な夏の到来を告げる祇園祭は、貞観八年(869)に疫病退散を祈願して神泉苑に66の鉾を立てた御霊会に始まるとされています。今では7/1〜31まで一ヶ月間かけて様々な神事や行事が執り行われていますが、祇園ばやしが響く中、山鉾に提灯が灯されて大勢の人出で賑わう16日の宵山と、その翌日の山鉾巡行が祭りのハイライトとして知られています。
実は私の実家は放下鉾や蟷螂山の立つ町内にありまして、子供の頃は部屋にいながら遠くより漏れ聞こえるお囃子に夏の風情を感じたりしたものでした。いずれはその町屋に実店舗の「拓庵」を構えるつもりでいます。和風の茶房もありますので、皆様お近くまで来られた際にはどうぞお立ち寄りください。←これはまた気が早いことで、もうちょっと先の話でこざいます(笑)。
もしかして梅雨?(5/17)
2006年05月17日
先週から雨が続いています。今日の雨は台風の影響らしいのですが、実感としてもう入梅でもよいですよね。それにしても関西が五月半ばにして梅雨・・。古典文学の時代なら梅雨の時期は「五月雨」(現在の六月ごろ)と決まっていましたが、異常気象が普通になっている昨今、季節の推移も以前と変わってきています。
気象庁、もうそろそろ梅雨だと認めたらどうやねん。タイミング外すとようやくの入梅宣言のあとすぐに好天が続いたりするんやで(笑)。

さて少し気の早いことですが、私の気持ちのうちでは既に梅雨だということで紫陽花の画像をアップしておきます。心のお慰みになりましたら・・。
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